役員報酬と給料とは根本的に違う—役員報酬について知っておいてほしいこと

起業して法人を設立したら、まず自分の給料を決める必要があります。

今、給料と記載しましたが、役員であれば、役員報酬ですよね。

所得税法上は、役員報酬も給与所得となり、給料と同じ扱いです。

なので、中小企業の社長さんも「役員報酬=役員の給料」という感覚です。間違いではないですが、根本的には性質が違います。

民法上の契約が違う

給料をもらう従業員と会社は、雇用契約を結んでいます。

役員が会社と結んでいるのは委任契約です。

委任は民法643条で次のように定められています。

委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

役員は、法律に則った会社経営を委任されていて、その対価として役員報酬を受け取っています。

日割計算はなし

従業員は、雇用契約であり、労働基準法や最低賃金法が適用されます。そして、一日でも仕事をしてもらったら、月額給料を日割り計算をして支払う必要がありjます。

例えば、給料が20日締め25日払いの場合に、22日に退職したら、21日と22日の2日分の給料を支払う必要があります。

一方、役員の場合は、日割りと言う概念がありません。

役員報酬は事業年度の途中で変更できない

役員報酬は、基本的に事業年度の途中で変更できません。出来ないというか、安易に変更すると、税金計算上で経費として認められません(これを「損金不算入」と言います)。

なぜなら、定期同額給与という決まりがあり、変更のチャンスは、事業年度開始の日から3か月以内と決められています。

定期同額給与とは次に掲げる給与です。

事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日(以下「3月経過日等」といいます。)までにされる定期給与の額の改定(国税庁抜粋 詳細はこちら

上記以外にも特別な場合には変更することができますが、基本的には「事業年度開始の日から3か月以内」で覚えておいてください。

役員は原則として賞与をもらえない?!

役員賞与は、基本的には税金計算上で経費として認められません(損金不算入)。

なぜかと言うと、役員に対する賞与は利益の配分であって、仕事に対する対価ではないという考えがあるからです。

つまり、配当金と同じ意味合いってことですね。

また、利益操作をさせないために役員賞与を損金不算入にするという話もあります。

ただし、次については経費として認めてもらえます。

  1. 事前確定届出給与
  2. 業績連動給与

2は、中小企業で適用できるケースはあまりないので、1についてのみ説明します。

事前確定届出給与

税務署へ期限までに届出書を提出することで、税金計算上、経費として認めてもらえます。

届出書には「いつ、誰に、いくら支払う」を記載する必要があります。実際の支給が少しでも届出内容と違っていると、税金計算上では経費として認めてもらえません(損金不算入)。

届出期限

事前確定届出給与の届出書の提出期限は、次のいずれかのうち、早い方です。

  1. 職務執行開始日、もしくは株主総会等の決議日のどちらか早い日から1ヵ月以内
  2. 事業年度の開始日から4ヵ月以内

1の職務執行開始日ですが、職務執行開始日を別途定めていない場合は、定時株主総会を行った日が職務執行開始日となります。

定時株主総会が毎事業年度後、定款に記載されている期間内であれば、いつ開催しなければならないということは有りませんので、開催日は曖昧になりがちです。

ただ、法人税の確定申告書は、定時株主総会で承認されて作成することになっていますので、法人税の確定申告書の提出日後を開催日とするのは、矛盾していることになります。

また、法人税の確定申告書では、決算確定日を記載する欄があり、その欄を記載していたら、その日が定時株主総会開催日となります。

そのため、法人税の確定申告書に決算確定日を記載した場合は、その日から1か月以内が届出期限になります。